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ごんぎつねの湯「red magic」
死ぬほど彼岸花を見た。赤い堤、赤い丘、赤い路だった。死んでもいいと思った。
愛知県半田市。童話「ごんぎつね」の作者新美南吉の生まれ育った町に、新美南吉記念館があり、そのそばを流れる矢勝川の堤は秋になると百万本の彼岸花で埋め尽くされる。彼岸花。それも百万本。冥土の土産に是非見に行かねばとずっと思っていた。そして見に行った。壮絶だった。東西にわたって約2km赤い堤が続いている。みな、がむしゃらに空を掴まんとして咲いている。奇跡的に復活したデジカメを振り回し夢中になって撮り続けるうちに、あたしは魔法にかかってしまった。
新美南吉記念館からインター寄り、ちょっとした温泉施設、ごんぎつねの湯がある。中へ入ると地元で採れた野菜や果物が売ってある。入り口のカウンターを通るとすぐに男湯女湯が分かれている。男女の利用は毎日入れ替わるらしい。
天井を見上げるとむき出しの梁と束。複雑に見えて規則正しく交差している。透き通ったお湯に身体を預け目を閉じると、さっき見た彼岸花が鮮明に蘇る。あたしの脳は命を赤く燃やすその花に占領されている。まだ死ねないな。この花に焦れる想いを銀河の彼方へ届けるまでは死ねないのだ。そう思った。瞼の裏で、「僕が魔法をといてやる。」そんな声が聞こえた気がした。あたしはまだしばらく、この赤い魔法にかかっていたい。
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